SPICEで学ぶ電気回路の基礎 講座
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3. 交流回路解析の基礎

3.1 交流と正弦波
交 流  電池の発明により、必然的に直流の技術が先行した。しかし交流は、発電機で容易に生成されることや、変圧器で簡単に高電圧送電ができ結果として電流値を小さくできるので電力損失(i^2×R)が少なくなるなどの利点があった。これらの理由により、送電に関しては交流が使われるようになった。

 時間経過にともない、電圧や電流の値が周期的に変化するものを交流という。
周期的に変化すれば三角波でも矩形波でも交流であるが、一般的には、三角関数の正弦関数または余弦関数で表すことができる周期的な変化が、交流の基本となっている。

 この理由は、自然界で発生する振動の基本が単振動(調和振動)であり、それが波動として伝わるとき正弦関数で表わされるからである。

正弦波  正弦関数の定義に従い関数y=sin x をx-y直交座標で表す。横軸に角度、縦軸にy方向の位置をとると、下記図(a)のような波型のグラフが得られる。ここでxは三角比の角度に対応している。グラフでは、xの単位は孤度法の単位のラジアンである。 360°で2πラジアン=6.283・・・ラジアンとなっている。

●横軸が時間の正弦波波形
 単振動している現象を、横軸を時間、縦軸を振動の変位としたグラフで表現したい場合、この三角関数の正弦関数を用いてy=sin ωtとおくと、その現象をうまくグラフ表示できる。

なぜかというと、単振動は任意の平面上で等速円運動する物体を平面真横から見たときの物体の軌跡に一致している現象であるから。単振動の振動数をf(c/s)、円の半径を1とすると、時間t(s)後の回転角度は、ωt=2πft(rad)となる。ωは1秒あたりの回転角度を示す角振動数(rad/s)。
したがって、時間と共に変化する単振動の軌跡をグラフ化するには、関数y=sin ωtに対して横軸に時間、縦軸に振動方向の変位をとればよい。 このように横軸を時間にとった場合は、観測する位置を固定してそのポイントが時間的にどう振動していくかを表している。 
なお、振動が振動の中心から始まる場合はこのままでよいが、時間0sで振動の中心からずれて始まる場合、さらに振動の大きさを考えて式を一般化すると

y=A sin(ωt+θ)  で表される。 Aは振幅、θは初期位相角(rad)。

式から分かるように、正弦波を決定するのは、周波数(振動数),振幅,位相角である。

下記図(b)は、A=1,f=1k[c/s],θ=π/2[rad]の単振動の軌跡を示す正弦波をグラフ表示したものである。(位相が進んでおり余弦関数と同じになっている。)

●横軸が位置(距離、長さ)の正弦波波形
 上記では、観測する位置を固定し、そこを通っていく正弦波を時間の関数として表した。これに対し、時間を固定しある瞬間に波形がどうなっているかを位置の関数として表す方法も考えられる。
水面を移動する波や長いロープの片方を固定して他方を水平方向に大きく繰り返し振動させたときに起こる波の、ある瞬間の状態を示めす場合である。

位置 x ではこの単振動がx/v [s] 遅れて伝わるからこれは、

y=sin kx という式で表すことができる。

ただし k=ω/v=2πf/v=2π/(vT)=2π/λ
k:波数 v:波の移動速度 λ:波長 T:周期

 図(c)は、f=1k(c/sまたはHz),速度v=340m/s(音速)とした正弦波を示している。


以上の検討より、時刻tで位置xにおける正弦波の一般式は、

y(x,t)=sin(ωt+θ-kx)  で表される。

正弦波交流の発生方法  ファラデーの電磁誘導の法則に従い、磁場内でコイルを回転させるかまたは回転磁場内の固定コイルによりコイルの両端に電場の振動が起こり、電圧が発生する。端子間に回路を接続することにより正弦波交流を得ることができる。
家庭のコンセントに来ているAC100Vも同様の原理である。

 メカニズムが必要な発電機を使わないで正弦波を得るために、正弦波の発振回路が考えられている。
増幅器の出力を帰還回路を通して入力に戻す帰還回路型の発振回路が各種考案されており、外部条件変動に対する安定性や正弦波の歪に対する精度が厳しくない場合に使われる。

 実験目的で正弦波信号を得る装置に、関数発生器(ファンクション・ジェネレータ)や任意波形発生器(ウェーブフォーム・ジェネレータ)などがあり、希望の周波数や振幅が高い精度で得られる。
 
工場等では、生産・検査ラインで安定した電圧を得たり波形歪を改善する目的で、専用の交流電源装置が使われる。

Scilabによる確認: 正弦波(図(a)-横軸が角度,図(b)-横軸が時間,図(c)-横軸が長さ)
図(a)
図(b)
図(c)
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3.2 正弦波と単一受動素子
正弦波と抵抗

(2011-6-28追記あり)
電気回路学の前提近似条件により、オームの法則は交流でもそのまま成り立つ。つまり抵抗の端子電圧v(t)は、素子を流れる電流i(t)に比例する

   v(t)=Ri(t)  または  i(t)=v(t)/R ----- 抵抗についての電圧・電流の関係式 (オームの法則)

したがって、正弦波を発生する交流電源に抵抗1個を接続し、電源の出力電圧をθ=0として Vm sin(ωt) とすると

   i(t)=Vm/R・sin(ωt)

となり、抵抗負荷では電圧と電流の位相は一致している。
正弦波とインダクタ

(2011-6-28追記あり)
 インダクタは、空心または鉄心やフェライトなどの強磁性体の周りにエナメル線などの導線をコイル状に巻いた構造である。コイルという呼び名も定着している。
アンペール-マクスウェルの法則により、インダクタは、素子を流れる電流i(t)に比例する鎖交磁束Φを発生する

  Φ(t)=Li(t)

そのときの比例定数をインダクタンスL(自己インダクタンス)と定義し、単位をH(ヘンリー)で表す。1Aの電流が流れるとき、1Wb(ウェーバー)の鎖交磁束を発生するインダクタンスが1Hである。
ここで磁束とは、インダクタの作るループを貫く磁場Bの法線成分を、ループ面積にわたって積分したもので、鎖交磁束または鎖交磁束数とは、コイルなどの場合に磁束を巻き数倍したもの。Φ=Nφ(鎖交磁束=巻き数×磁束)

ファラデーの電磁誘導の法則より、インダクタには流れる電流の変化(鎖交磁束の変化)に比例した逆起電力が発生する。

  v(t)=dΦ(t)/dt=Ldi(t)/dt ----- インダクタについての電圧・電流の関係式
                        (電流と逆起電力の正の向きを逆にとっている)

インダクタンスは、コイルの形状、巻数、媒質などによって決まるコイル固有の値である。導線の太さ、長さ、巻き数、コイルの直径、コアの透磁率などを始めとして、パラメータが多い。

●電気回路学でインダクタを使用する場合は、次のような近似により理想的な素子として取り扱う。
・インダクタ電流で発生する磁場は回路の他の部分と影響を与えあわない。
・インダクタを構成する導線は電気抵抗を持たない。
・導線表面の電荷は無視できて、電場を作らない。

 インダクタに正弦波電圧 v(t)=Vm sin ωt を加える場合を考える。
流れる電流の式は、インダクタの電圧・電流の基本式の両辺を積分して

  i(t)=1/L ∫v(t)dt

より i(t)=-Vm/(ωL) cos ωt=Vm/(ωL) sin(ωt-π/2)

 また、逆に電流を基準にして、インダクタに正弦波電流 i(t)=Im sin ωt を加えると、
インダクタ両端の電圧v(t)は、

  v(t)=ωLIm cos ωt=ωLIm sin(ωt+π/2)

これらの式より、インダクタ素子の両端の正弦波電圧と素子を流れる正弦波電流の位相は、電圧よりも電流がπ/2(rad)遅れていることが分かる。
これらの式に電圧と電流の振幅比として現れている ωL は、直流の抵抗と同じ意味を持ち単位はΩ(オーム)となり、誘導性リアクタンスと呼ばれる。
正弦波とキャパシタ

(2011-6-28追記あり)
 キャパシタは、2枚の導体板をわずかな間隔を空けて向かい合わせ、間には誘電体をはさんだ構造である。コンデンサという呼び名も普及しているが、英語圏では別の意味であり使われていない。
2枚の導体板間の一方にプラスの電荷、他方に同量のマイナスの電荷があるとする。導体間の電位差Vは、小量の電荷を一方の板から他方の板まで運ぶために必要な仕事を単位電荷あたりに直したものだから、(電場の)ガウスの法則を使って、

  V=Ed=σ/ε0・d=Q/ε0A・d
Qの式にして、 Q=ε0A/d・V
比例定数をCとおき、まとめると、

  Q=CV

キャパシタは、蓄えられる電荷が素子両端電圧に比例する
比例定数Cをキャパシタンス(容量,静電容量)と定義し、単位をF(ファラッド)で表す。端子間電圧が1Vのとき、蓄えられる電荷が1C(クーロン)のキャパシタのキャパシタンスが1Fである。

また、上式の両辺を時間で微分すると
  dQ/dt=dq(t)/dt=i(t)=C・dv(t)/dt  交流を考えてQ→q(t),V→v(t)とする。
つまり、キャパシタに加わる電圧と電流には次の関係がある。

  i(t)=C・dv(t)/dt ----- キャパシタについての電圧・電流の関係式

●電気回路学でキャパシタを使用する場合は、次のような近似により理想的な素子として取り扱う。
・キャパシタを構成する極板も引き出し用の導体も完全導体とする。
・極板間の絶縁は完全で電荷の流れはないとする。
・二つの極板間は近接していて、片方の極板から出る電気力線はすべて他方の極板で終わる。
・二つの極板上には常に異符号の電荷が等量存在し、導線の表面上の電荷に比べてはるかに大きい。
・キャパシタの近くに磁界はない。

 キャパシタに正弦波電圧 v(t)=Vm sin ωt を加えると、

  i(t)=ωCVm cos ωt=ωCVm sin(ωt+π/2)

 逆に、正弦波電流 i(t)=Im sin ωt を加えるとすると、
基本式の両辺を積分して

  v(t)=1/C ∫i(t)dt

より、
キャパシタ両端の電圧は、

  v(t)=Im/(ωC) cos ωt=Im/(ωC) sin(ωt-π/2)

これらの式より、キャパシタ素子の両端の正弦波電圧と素子を流れる正弦波電流の位相は、電圧よりも電流がπ/2(rad)進んでいることが分かる。
これらの式に電圧と電流の振幅比として現れている 1/ωC は、直流の抵抗と同じ意味を持ち単位はΩ(オーム)となり、容量性リアクタンスと呼ばれる。
SPICEによる確認: 電圧源と電流源に抵抗を接続したときの正弦波波形(横軸は時間)
SPICE回路図ファイル Alternating_Current_R.zip (TopSPICE回路図ファイル+解析設定ファイル)
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回路図の作成 上図の簡単な回路図を作成します。使用する素子は、電圧源V1と電流源I1とそれぞれに接続される抵抗2個です。電圧源は、Vシンボルのうち外観上の理由でVSINを選んでいます。回路図上でシンボルをダブルクリックして開くダイアログで、発生させる交流電圧の仕様を設定します。正弦波なのでTRANsient Specの欄のSINを選びます。正弦波の上下の中心となるオフセット値0V、振幅値1V、周波数1kHzを入力します。電流源も同様にして、オフセット値0A、振幅値10mA、周波数1kHzとします。
交流といえどもGND(0V)は、SPICEに計算をさせるために必ず回路に一つ必要です。直流に準じて、電圧源・電流源の基準側を決めGNDとします。
解析の設定と実行
(過渡解析)
交流電源の周波数を1kHzとしていますので、3周期くらいの波形を表示するために、解析の終了時間を1周期の3倍の3msとします。
観測する箇所はノード1とノード2と命名した節点の電圧V(1),V(2)および負荷抵抗R1を流れる電流I(R1)と負荷抵抗R2を流れる電流I(R2)
です。V(1),V(2)という電圧の基準は指定がない場合、常に0Vです。V(1)という場合、V(1)-V(0)の電位差を表しています。
グラフをプロットするテクニックとして、グラフが重なってしまうような場合は、表示する段を分けます。ここで使っているTopSPICEの波形表示プログラムには、段を指定するコマンドがあるのでこれを使います。これは解析設定と同じファイルに保存されるので、一度設定すればOKです。
解析結果からわかること  SPICEの過渡解析で得られる解析結果のグラフは横軸が時間なので、正弦波の波形としては、正弦波のところで出てきた図(b)と同様の横軸時間のグラフが表示されます。これは、回路図の任意の節点(ノード)の電圧や素子に流れる電流を観測すると、時間の経過にしたがってどう変化しているかを示しています。オシロスコープで観測しているのと同じです。これは当然ながら回路の導線上に沿ってこのような波形が乗っているわけではありません。また、電圧電流は配線導体や素子内の現象ですので、波形自体は横波として表示されていますが、便宜上のもので実態ではありません。
 
抵抗負荷の場合、電圧電流が時間とともに変動してもオームの法則がそのまま成り立っています。得られる正弦波波形の位相は一致しています。
SPICEによる確認: 電圧源と電流源にインダクタを接続したときの正弦波波形 
SPICE回路図ファイル Alternating_Current_L.zip (TopSPICE回路図ファイル+解析設定ファイル)
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回路図の作成  今度は抵抗負荷の代わりにインダクタを接続します。上図の電圧源の方の回路で、インダクタに直列に非常に小さな値の抵抗を接続してあります。これは、内部抵抗が0という理想電圧源と寄生成分なしの理想インダクタという組み合わせのため、直列抵抗なしでは流れる電流が無限大となり解析エラーとなってしまうからです。SPICEの計算に影響を与えない程度の小さな値の抵抗値を入れると、エラーがでなくなります。現実の回路では、元々いろいろな寄生成分があるのでこのようなことにはなりません。
解析の設定と実行
(過渡解析)
 過渡解析は、基本的には終了時間の設定だけです(TopSPICEでは、刻み時間の目安も必要)。
ただし、SPICE解析の細かい話になってしまいますが、これらの回路は、単純に上記の不定積分式を解くことになります。バイアスをうまくかけて積分定数を0にしなければなりません。電圧源と電流源の位相を90°進めたのと、L1の初期電流を0Aにしたのは、この対策のためです。
 過渡解析で解析時間を多少犠牲にしてもステップ時間(刻み幅)の上限を指定して、計算精度をあげたいという場合があります。下記のように数値をカーソルで呼んだりする場合です。このような時は、のように最大ステップ時間(この図ではStep ceiling:)を設定します。この例では、計算の時間刻み幅が最大でも3usecになります。
解析結果からわかること  純粋なインダクタンスに正弦波信号を加えると、インダクタ両端の電圧と流れる電流の位相は、電流が90°遅れる。
誘導性リアクタンスは、この回路の場合 ωL=2πfL=6.283・・Ωとなります。正弦波の振幅値で計算すると、Im=1V/6.283Ω=159.15mAとなり解析結果と一致していることが確認できます。
SPICEによる確認: 電圧源と電流源にキャパシタを接続したときの正弦波波形 
SPICE回路図ファイル Alternating_Current_C.zip (TopSPICE回路図ファイル+解析設定ファイル)
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回路図の作成  今度は電源の負荷としてキャパシタを接続します。今回は、電流源回路に工夫が必要です。上図の電流源回路で、キャパシタに並列に非常に大きな値の抵抗を接続してあります。これは、寄生成分なしの理想キャパシタは完全な絶縁体なので、内部抵抗無限大の電流源では、ノード2側の電位を決めることができず、解析エラーとなってしまうからです。SPICEの計算に影響を与えない程度の大きな値の抵抗値を入れて、エラーを回避します。現実の回路では、元々いろいろな寄生成分があるのでこのようなことにはなりません。
解析の設定と実行
(過渡解析)
 インダクタの回路と同様にSPICE解析の細かい話になってしまいますが、こちらの回路でも、単純に上記の不定積分式を解くことになります。バイアスをうまくかけて積分定数を0にしなければなりません。電圧源の位相を90°進めたのと、C2の初期電圧を-1Vにしたのは、この対策のためです。電流源の振幅が6.28mAと中途半端な値なのは、電圧振幅を電圧源と同じ1Vにするためです。
解析結果からわかること  純粋なキャパシタンスに正弦波信号を加えると、キャパシタ両端の電圧と流れる電流の位相は、電流が90°進む。
容量性リアクタンスは、この回路の場合 1/ωC=1/(2πfC)=159.15・・Ωとなります。正弦波の振幅値で計算すると、Im=1V/159.15Ω=6.283mAとなり解析結果と一致していることが確認できます。
3.3 交流電力と実効値
交流電力 直流の電力と同様に、交流の電力も下記式で表される。

 
 p(t)=v(t)・i(t)

この交流電力p(t)は、時間の関数であり、直流のように一定値でなく時間により変動する。

 いま、抵抗1個を交流電源に接続した回路で、RΩの抵抗で消費される電力について考える。
電源電圧をv(t)=Vm sin ωt とすると、流れる電流は

  i(t)=Im sin ωt=Vm/R・sin ωt

よって

  
p(t)=Vm^2/R・sin^2 ωt=Vm^2/2R・(-cos 2ωt+1)=VmIm/2・(-cos 2ωt+1)

 ∵ cos2θ=cos^2θ-sin^2θ=(1-sin^2θ)-sin^2θ=1-2sin^2θ より
    
sin^2θ=1/2(1-cos2θ)

この式より、交流電圧の振幅Vmと電流の振幅Imとすると、
交流の電力は、中心値VmIm/2を中心値として、0〜VmIm/2の間で電圧と電流の2倍の周波数で変動する。電力の平均値は、VmIm/2(W)となる。

実効値  直流で交流のこの値と同じ電力を得ようとした場合には、直流電圧値をVm/√2、直流電流値をIm/√2とすればよい。
そこで、振幅Vm(V)の正弦波交流電圧に対して、Vm/√2(V)を実効値電圧
同様に、振幅Im(A)の正弦波交流電流に対して、Im/√2(A)を実効値電流と呼んでいる。
一般的に交流何ボルト、何アンペアという場合は、実効値を指している。

 交流電圧と交流電流は実効値で表すというルールにより、電圧値・電流値が示されれば、直流と交流の違いなく、その積を電力値として計算できる

したがって、一般家庭のコンセントに来ているAC100Vとは実効値のことであり、時間の式で表すと、
  
√2×100 sin(ωt+θ) となる。
正弦波の上下変動幅(peak to peak値)は、約-141V〜+141Vとなっている。

 
一般的に、ある量f(t)が時間的に変動し、かつそれが周期Tで変動する場合、その平均値は以下の一つ目の式で表される。このときf(t)は、ある瞬間瞬間の値を示しているので瞬時値と呼ばれる。

以上の知識を元にすると、実効値とは、「瞬時値の2乗の1周期にわたる平均値の平方根」と定義される。実効値は、この定義から二乗平均平方根値(Root Mean Square value)とも呼ばれ、頭文字をとってRMS値と略されることも多い。数式で書くと、電圧ならば以下の二つ目の式のようになる。
 なお、変動量が正弦波でない場合も、この式に代入することにより得られる結果が、実効値となる。

実効値とは、時間とともに変動する信号の平均的な値を表すひとつの方法ということができる。
インダクタとキャパシタにおける交流電力  インダクタ1個を交流電源に接続した回路で、消費されるであろう電力について考える。

電源電圧をv(t)=Vm sin ωt とすると

インダクタンスの定義 v(t)=Ldi(t)/dt より i(t)=1/L ∫v(t)dt であるので
流れる電流は i(t)=-Vm/(ωL) cos ωt となる。(前出)

よって
  
p(t)=v(t)・i(t)=(Vm sin ωt)(-Vm/(ωL) cos ωt)=-Vm^2/(ωL)・(sin ωt・cos ωt)=-Vm^2/(2ωL)・sin 2ωt

  
∵ sin2θ=2sinθcosθ より sinθcosθ=1/2(sin2θ)

この式より、インダクタにおける電力の瞬時値は、電圧と電流の2倍の周波数で振幅はVm^2/(2ωL)、0を中心として変動している。平均電力を考えると、式より明らかに0となる。

 
したがって、理想インダクタにおいて電力は消費しない


 同様に、キャパシタ1個を交流電源に接続した回路を考える。

電源電圧をv(t)=Vm sin ωt とすると

キャパシタンスの定義 i(t)=Cdv(t)/dt より
流れる電流は i(t)=ωCVm cos ωt となる。(前出)

よって
  p(t)=v(t)・i(t)=(Vm sin ωt)(ωCVm cos ωt)=ωCVm^2・(sin ωt・cos ωt)=ωCVm^2/2・sin 2ωt

 ∵ sin2θ=2sinθcosθ より sinθcosθ=1/2(sin2θ)

この式より、キャパシタにおける電力の瞬時値は、電圧と電流の2倍の周波数で振幅はωCVm^2/2、0を中心として変動している。平均電力を考えると、式より明らかに0となる。

 
したがって、理想キャパシタにおいて電力は消費しない

SPICEによる確認: 抵抗負荷に正弦波交流を流したときの電力 
SPICE回路図ファイル Alternating_Current_RP.zip (TopSPICE回路図ファイル+解析設定ファイル)
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回路図の作成  交流電圧源と抵抗を接続した簡単な回路です。VmとRを変数にしているのは、波形表示プログラムで、Im=Vm/Rの計算をしているということを分かり易くするためのものです。直接数値を入れてもかまいません。
解析の設定と実行
(過渡解析)
 0〜3msまで過渡解析を設定実行します。解析精度向上のため、最大時間ステップを最終時間の1/1000の値である3usとしました。測定ポイントは、抵抗の電圧と電流だけです。
その他の値は、波形表示プログラムで計算させた値になります。{RMS(V(1))} :V(1)の表示範囲の実効値平均、{RMS(I(R1))} :I(R1)の表示範囲の実効値平均、P={V(1)*I(R1)} :交流電力(瞬時電力)、AVG(P) :交流電力Pを表示範囲で平均した値、{RMS(V(1))*RMS(I(R1))} :実効値電圧と実効値電流を掛け算したもの。VmIm/2を計算した値。
解析結果からわかること  波形表示プログラムの持つ実効値の関数は、十分に時間が経過した定常状態では、一定の値に収束することがグラフの結果から読み取れます。電圧・電流それぞれ最終的にはVm/√2=0.707・・,Im/√2=0.707・・となるはずです。
交流電力の波形は、p(t)=VmIm/2・(-cos 2ωt+1)で示される通り、電圧・電流の2倍の周波数となり、平均値はVmIm/2 です。
また、波形表示プログラムの平均値の関数と、電圧・電流の実効値の関数は、まったく同じ波形となっています。どちらもVmIm/2へ収束しています。実効値の定義と一致することが確認できます。
 波形表示プログラムの関数AVG( )とRMS( )では、表示のように収束値としてしか結果が得られませんが、計算で求めるときは、定常状態での話なので数値で直接得られます。
SPICEによる確認: インダクタとキャパシタ負荷に正弦波交流を流したときの電力 
SPICE回路図ファイル Alternating_Current_LCP.zip (TopSPICE回路図ファイル+解析設定ファイル)
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回路図の作成  正弦波交流電圧源とインダクタ、キャパシタをそれぞれ接続した回路です。インダクタには、3.2項と同様の理由から無視できるような小さな抵抗を直列に接続しています。初期条件IC=0や正弦波の位相を変えているのも3.2項と同じです。
キャパシタの容量値が変な値なのは、インダクタと電力波形の振幅が同じになるように合わせたためです。(ωC=1/ωLより)
解析の設定と実行
(過渡解析)
0〜3msまで過渡解析を設定実行します。解析精度向上のため、最大時間ステップを最終時間の1/1000の値である3usとしました。SPICEによる計算は、各素子の電圧と電流値だけです。インダクタ部の電力をPL、キャパシタ部の電力をPCとおいて計算させています。電力の平均値は、波形表示プログラムのAVG関数で求めています。
解析結果からわかること プロット3のPLがインダクタの瞬時電力、プロット6のPCがキャパシタの瞬時電力を示しています。
抵抗では、電圧と電流の位相にずれがないために、その積である電力は常に正の値となっていました。電圧(正)×電流(正)=正、電圧(負)×電流(負)=正だからです。インダクタやキャパシタでは、電圧と電流の位相が90°ずれるために、その積である電力は、上図波形のように正と負の値を取ります。これは、平均すると0Wとなり、抵抗のような電力消費がないということです。
 確認のために、電圧実効値と電流実効値の積も表示させていますが、瞬時電力の振幅値を示しているだけで、インダクタとキャパシタの回路では電力としての意味はありません。

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